ファイザー社とモデルナ社のmRNAワクチンの違いは?

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新型コロナに対するファイザー/BioNTech社のワクチン接種は、医療従事者から始まり、当院でも高齢者の方々の接種が進んでいる状況です。また、企業や大学等におけるワクチン接種、いわゆる職域接種も始まりましたが、こちらはファイザーのではなくモデルナ社のワクチンになります。

医療従事者および高齢者を対象としたワクチンと、職域接種でのワクチンはどちらもmRNAワクチンですが、有効性や安全性などに違いはあるのでしょうか。まずは、それぞれの添付文書を元に、用法や用量などを表にまとめましたが結構違いますね。

ファイザー/BioNTechのワクチン モデルナ/武田ワクチン
用法および用量 1回0.3mLを3週間の間隔で筋肉内に接種 1回0.5mL4週間の間隔で筋肉内に接種
対象年齢 12歳以上 18歳以上
接種数/バイアル 6回分 10回分
冷蔵保存の期間 2~8℃で1ヵ月間 2~8℃で最長30日間
診療所レベルだと、ファイザーのコミナティの方が使い勝手が良いですかねぇ。

ワクチンの有効性に関しては、ファイザーのワクチンが約95%、モデルナが94%とほぼ同等です。では、安全性に関しては、どうでしょうか。ワクチン接種が先行する米国では、米国疾病予防管理センター(CDC)が立ち上げたV-safeという安全監視システムがあり、利用者はスマートホンで症状や見られた副反応などを入力することで(自己申告)、かなりのサンプルサイズのデータベースが構築されます。そのデータを解析した論文が、Johanna Chapin-Bardales氏らによって、米国医学会誌のJAMAに報告されています。その論文には、両社のワクチンに関する安全性プロファイルの比較表があるのですが、数字のみでしたので、見やすいようにグラフ化したのが以下になります。

ワクチン接種後0~7日間でみられた注射部位にみられた主な副反応

ワクチン接種後0~7日間でみられた主な全身性の副反応

こうしてみると、意外とモデルナ社のワクチンの方が副反応が多めに出ているようです。1回目よりも2回目の方が副反応が出やすいのは両者とも同じです。どちらのワクチンも、高齢者よりは若年者で上図のような副反応がみられやすいということが知られていますが、日本ではモデルナ社のワクチンは職域接種で活用されるワクチンになるので、そういう意味では、発熱や頭痛・倦怠感などの副反応はそれ相応の方々に見られるだろうなと思います。

発熱や頭痛などに対しては、解熱鎮痛剤の使用が一番です。カロナールのようなアセトアミノフェンが無難だとは思いますが、厚労省のサイトにも記載があるように、ロキソプロフェン(ロキソニン)やイブプロフェンなど手持ちの市販の解熱鎮痛剤でも良いです。少しでも不安があるようでしたら、かかりつけ医や薬剤師に相談するのが良いでしょう。

なお、重度のアレルギー反応であるアナフィラキシーですが、先日6月23日に厚生労働省が専門部会で報告したところによると、ファイザー製のワクチンによるアナフィラキシー(国際基準)の報告件数は、6月13日時点で100万回あたり10件でした(~10万人に1人)。一方、モデルナ製のワクチンは、まだ国内での接種数が限定的ですが、アナフィラキシーの報告例はありません。これは、単純に接種回数がまだ報告時点で44万回ということで例数が少ないだけで、今後、何件かは報告されてくるかもしれません。

この国内でのアナフィラキシー件数は、当初は日本で多いかなとも思われましたが、今年2月にJAMAに投稿された論文によると、米国では100万件あたりのアナフィラキシー発生率は、ファイザー製だと4.7件、モデルナ製だと2.5件でしたので(各々994万3,247回接種、758万1,429回接種での集計)、国際基準に該当するものだと日本でやや多いかもしれないという感じです。ともあれ、アナフィラキシーは、適切に対処すれば致命的ということはなく、過度に恐れることはないと考えます。

■ 了

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『ファイザー社とモデルナ社のmRNAワクチンの違いは?』へのコメント

  1. senga_0806@yahoo.co.jp : 投稿日:2021/08/30 23:35

     ファイザー/BioNTechのワクチン1回0.3mLを3週間の間隔で筋肉内に接種、モデルナ/武田ワクチン
    1回0.5mLを4週間の間隔で筋肉内に接種となっていますが、接種量の違いが副反応に表れているのでしょうか。
     コロナは本当に飛沫感染なのでしょうか、空気感染の可能性はいかがですか。
     定年退職後の暇なおじさんから。

    • Dr. Martin : 投稿日:2021/08/31 13:05

      こんにちは。2つともmRNAワクチンですが、組成が違いますので単純な量や投与間隔の比較で副反応の違いを説明することは出来ません。が、単純に投与量が多いことが副反応の違いとして出てきている可能性はありますね。一般的に、医薬品は、多くの場合、欧米を中心とした海外先行で開発が進みますし、開発時の薬剤投与量は欧米人の体格を基準に決められ、日本人の体格は欧米人のそれと比べて小柄なのは明らかで、日本人には多いかもという場合はあります(それでもきちんと日本人で検討して国の審査を経て承認されるので、そういう場合でも許容できる安全性であれば投与量が問題になることはほぼないです)。
      新型コロナの感染経路に関しては、単純な話ではないのですが、同じCOVID-19でもアルファ株とデルタ株では、明らかに感染力が違いますし、デルタ株では、水痘並みの空気感染力の可能性も言われたりしますが、まだまだデータが不十分です。ただ、臨床の現場だと、デルタ株の家族内感染の程度は、従来のものとは比較にならず高いことを実感してます。ですが、ここ数日は先週前半までの感染爆発という状況が少し緩和されてきたのを肌で感じており、このまま第5波が収束に向かうことを切に願うのみです。