5類移行後の新型コロナに対するPCR検査等の費用について

はじめに

令和5年5月8日(月)から、新型コロナウイルス感染症は5類に移行し、季節性インフルエンザウイルスと同様な扱いになります。たまたまでしょうが、同じタイミングで、先日5月5日にWHOから実に3年3ヵ月に及んだ新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言の終了が発表されました。私が義父から当院を承継したのが2020年1月で、その月末には緊急事態宣言発出ですから、まさにコロナとともに歩んだ3年間ということで、なかなか感慨深いものがあります。当院では、発熱外来も比較的早期からはじめましたが、幸いにも私自身が新型コロナにかかることはなく来ています。今後も油断はせずに感染対策はしっかりやっていこうと思います。

5類移行で検査費用はどうなる?

これまでは、新型コロナの感染が疑われる患者さんは公費でPCR検査や抗原検査を受けることが出来ました。公費ということは、国からの補助ですので、検査に対する費用は発生しなかった訳です。新型コロナは感染性が高く速やかな診断が必要でしたので、そういう意味では、患者さんへの負担なく検査が出来たというのは良い行政判断だったと思います。ところが5類に移行すると、季節性インフルと同様な扱いということで、医療機関が必要と判断した検査に対しては、保険診療の枠内で費用がかかるようになります。では、具体的にどれくらいの費用がかかるのでしょうか?
現時点で私が把握している情報[東京都医師会厚労省の令和5年3月31日事務連絡]だと、以下のような感じです。

  • PCR検査は、保険点数が合計850点なので、3割負担の方は2550円、1割負担の方は850円
  • 新型コロナのみの抗原検査は、保険点数が合計444点なので、3割負担の方は1330円、1割負担の方は440円
  • 新型コロナとインフルの同時抗原検査は、合計564点なので、3割負担の方は1690円、1割負担の方は560円

上記は、あくまで検査に対しての費用ですので、実際には、これに加え、初診料や再診療、また必要に応じてお薬代もかかってきます。したがって、診察や処方に加え、検査もということになれば、3割負担の方で5000円に届かない程度の費用がかかるイメージかと思います(院内処方の場合)。

保険点数に関して、少しだけ詳しい話をすると、PCR検査の850点というのは「SARS-CoV-2核酸検出」という検査項目が700点、それに付随する「微生物学的検査判断料」が150点、合わせて850点ということです。

高額な新型コロナの経口薬は引き続き公費負担に

もしPCR検査や抗原検査でコロナ陽性ということになれば、インフルエンザの抗原キットで陽性になった場合にイナビルやゾフルーザなどの抗ウイルス薬が処方されるのと同様に、コロナに対する抗ウイルス薬の服用を検討することも可能です。外来診療レベルだと、経口の抗ウイルス薬として、「ラゲブリオ」、「パキロビッド」、「ゾコーバ」が処方される機会があるかもしれませんが、これらの新しい薬剤は承認されてまだ日も浅いこともあり、非常に高価です。それぞれ5日間内服する薬剤ですが、順に94300円、99050円、37050円と、気軽に出るお薬ではないですね。ただし、医学的な判断から、これらの薬剤を必要とされる方々は必ず一定数いらっしゃるのもまた事実でして、国は、今年の9月末までは全額公費支援の対象としています。

ちなみに、これら3剤のうち、「ラゲブリオ」及び「パキロビッド」は、重症化リスク等を有する患者さんに投与できますし、「ゾコーバ」は、重症化リスクはないけれど、このお薬の投与が必要と考えられる患者さんに投与可能です。実際には、それぞれのお薬について、細やかな処方条件があるので、その辺りは、処方医とよくよく相談してから~という流れになると思います。ちなみに、当院では、必要に応じて、これらのお薬の処方が可能です(基本的に院内処方)。

まとめ

5類移行後の新型コロナに対するPCR検査等のまとめです。

  • PCR検査は、3割負担の方は2550円、1割負担の方は850円の検査代が別途かかる
  • 抗原検査は、3割負担の方は1330円、1割負担の方で440円かかる
  • インフルも同時に見ることができる抗原検査だと、3割負担の方で1690円、1割負担の方で560円かかる
  • これに加え、初診料や再診療、お薬代がかかり、院内処方だと5000円に届かない程度の窓口会計になりそう

5月8日から5類に移行しますし、WHOによって「緊急事態宣言」の終了が発表されたことも相まって、何となく「あぁ、ようやくコロナも終わりだ」と思いたくなりますが、現時点でコロナ自体が弱毒化して、パンデミックが終わった訳ではありません。ただ、ワクチン接種の浸透や自然感染により免疫がついた方々が増えてきて、世界的に収束に向かっているのでは?という淡い期待感はありますし、最近の週末の発熱外来は、コロナ以前の落ち着きを取り戻しています。コロナを気にしなくて良い当たり前の日常がもうすぐそこまで来ていると期待して。

■ 了

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