新型コロナ感染症から軽快後のPCR検査について

当院では、新型コロナ感染症(COVID-19)に対するPCR検査を自院で行っています。基本的には当日中に結果が分かるので(多くは1時間以内)、検査に関するお問い合わせも多くいただきます。その中で、よくあるお問い合わせのひとつが、

新型コロナにかかって療養していたけれど、保健所から療養解除の連絡が来ました。出社にあたり会社からPCR検査による陰性証明書の提出を求められたけれど、PCR検査は可能でしょうか?

というものです。これは悩ましい問題です。なぜなら、COVID-19から回復した後でも、PCR検査では陽性となる期間がそれなりに続くということが知られているからです。「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第4.2版」に記載がありますが、例えば、韓国からの報告だと、隔離解除後にPCR陽性となった226例の解析では、発症から平均45日間、最長で82日間PCR検査は陽性でした。これらPCR陽性者と濃厚接触した方々790例から新規感染例はいなかったことから感染性はないと考えられています。つまり、

「PCR陽性 = 感染性を有する(他人にうつす)」ではない

ということです(勿論、感染初期のPCR陽性例なら十分な感染性を有します)。現時点においては、世界中の色んなデータから軽症〜中等症の人は発症10日後には感染性はなくなっているし、人工呼吸器等が必要な重症な方でも最長20日後には感染性はなくなるということが分かっています。しかしながら、この辺りの認識がそうでもない事例が見受けられます。現在の退院・療養解除基準は以下のようになっています。

  1. 有症状者の場合
    1. 発症日から10日間経過し、かつ、症状軽快後72時間経過した場合、退院可能とする。
    2. 症状軽快後24時間経過した後、PCR検査または抗原定量検査で24時間以上間隔をあけ、2回の陰性を確認できれば、退院可能とする。

COVID-19の軽症者で自宅療養中だった方は、最短10日で職場復帰できるわけです。もし、会社がPCR検査は必要だろうと判断して、PCR検査で陽性となったら、その回復した方はさらに自宅療養を続けないといけないのでしょうか?他人への感染性はなくなっているのにです。さらには、医療機関側からすると、PCR検査で陽性と出ると、現行だと発生届を提出する必要がありますが(HER-SYSへの入力)、それを報告の是非も含め保健所と相談しながら逐一やっていくのはあまり現実的ではありませんね。

接客業のような職場や現場中心のような職場で、お客様には迷惑はかけられないという会社の中の人の心情は理解は出来ます。なので、他人への感染性はないですよ、というのを確認したいのであれば、例えば、抗原検査(注:以前の感染をしめす抗体検査ではありません)を実施して、その検査で陰性を示すというのはありで、もともとCOVID-19だった方が、療養解除後に抗原検査で陰性なら、少なくとも他人にうつすようなウイルス量は体内に保持していないでしょう。実際、当院ではCOVID-19回復者に対する抗原検査を実施して、必要に応じて抗原検査による陰性証明書を発行しています。勿論、抗原検査で陽性となれば、その方は体内に相応のコロナウイルスを保持している可能性が高いので、PCR検査による再検なども含め、慎重な判断が必要になります。

新型コロナウイルス感染症は新しい感染症で、新しいエビデンスがどんどん蓄積しています。逆に言えば、「基準」というものもどんどん更新されていくということです。厚生労働省の通知を追うと分かりますが、昨年の2月ごろの退院基準では、2回のPCR検査が必要でした。それが、エビデンスの蓄積により、PCR検査だと陽性期間がそれなりに続くことが分かってきて、昨年の5月末には、「発症日から 14 日間経過し、かつ、症状軽快後 72 時間経過した場合」に退院OKとなって、PCR検査は必須ではなくなりました。そして、現時点では、発症日から10日間経過し、…となっています。このように、特に新規の感染症に対しては、最新の情報を把握しておくことが肝要で、私も出来る限り知識をアップデートしていこうと思います。

■ 了

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