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授乳中に新型コロナに感染してしまったら?

発熱外来をやっている私の肌感覚としては、猛威をふるったデルタ株ですが、先週辺りからその勢いは鈍ってきました(これが緊急事態宣言による影響なのか、あるいはデルタ株自体が弱毒化しているのか、はたまた新たな変異株が台頭してくる前触れなのか、油断することなく経過をみていく必要がありますが)。デルタ株は、従来の変異型と違って、家庭内感染が非常によく見られます。それだけ感染力が強いということです。また、陽性と診断されると、まずは自宅療養となりますが、アセトアミノフェン(カロナール®)のような解熱剤でもなかなか熱が下がらず(当院では、1日1500mgを基本としてます)、1週間経っても、まだ38℃台の発熱がみられるというケースも多くみてきました。この毒性の強さも従来株での経過と違うなと感じるところです。

現時点で、当院でコロナ陽性と診断した患者さんは500例近くですが、その中には、当然、妊婦さんだったり、授乳中の女性もそれなりにいらっしゃいます。また、生後数ヶ月というお子さんもコロナ陽性だったりします。そういう診断を下すたびに、胸がぎゅっと締め付けられますが、診断をきちんと付けるということも、一方で大切ですので、その先を見据えて診療にあたるということが私にできることです。

前置きが長くなりましたが、家庭内感染が普通に起きる状況ですので、授乳中のお母さんも一定数いらっしゃいます。「コロナ陽性」と診断された授乳中のお母さんが投げかける質問としては、

「こどもへの授乳は大丈夫でしょうか?」

です。これに関しては、まとまったデータはないのが実情ですが、厚労省も、WHO(世界保健機関)CDC(米国疾病予防管理センター)「母乳を介した感染リスクは低いだろう(つまり、母乳中に感染性を有するコロナウイルスが含まれる可能性は低い)」というスタンスです。なので、新型コロナに感染したお母さん又は濃厚接触者相当のお母さんが授乳を続けることは可能です。上記厚労省のサイトでは次のように記載されています。

  1.  直接母乳:授乳前の確実な手洗いと消毒、マスクを着用して直接授乳をする。
  2.  搾乳  :確実な手洗い、消毒後に搾乳をし、感染していない介護者による授乳を行う(1. より接触・飛まつ感染のリスクが低く、あとで直接母乳に戻りやすい利点がある)。
  3.  人工栄養:(母乳の利点と授乳のリスクを説明した上で)人工乳を授乳する。

WHOのサイトでは次のような記載です。

COVID-19に感染した又は感染が疑われるお母さんが授乳をはじめることや授乳を続けることは、何ら問題ありません。お母さんは、授乳によるベネフィットが、母子間の垂直感染のリスクをはるかに上回るということについて(主治医から)助言を得るようにしましょう。

[…] mothers with suspected or confirmed COVID-19 should be encouraged to initiate or continue
to breastfeed. Mothers should be counselled that the benefits of breastfeeding substantially outweigh the potential risks
for transmission.[…]

CDCのサイトでは以下のような記載です。

(前提として)授乳又は搾乳をするときは、たとえコロナに感染していなくても、石鹸で20秒間は手を洗うようにしましょう(石鹸がなければ、60%以上のアルコール消毒でも良いです)。
もしCOVID-19に感染したお母さんが授乳したいのであれば、

  • 授乳の前に手を洗いましょう。
  • 授乳中又は赤ちゃんの近くにいるときはマスクをしましょう。

といった具合で、「授乳は問題ないけれど、これまで通りの感染予防策をきちんとやってから臨みましょう」ということですね。

上述したWHOのリンクですが、興味深いことにも言及されています。それは、母乳中に含まれる(COVID-19に対する)分泌型のIgA抗体が、授乳を介して赤ちゃんのCOVID-19に対する感染防御にも寄与する可能性です。一般的に、IgAが低下すると病気にかかりやすくなると言われてますが、これに関連して、母乳の中でも特に初乳にはIgAが多く含まれており、これが新生児の未熟な免疫機構への強力な一助になることはよく知られたことです。で、COVID-19にかかって回復したお母さんの母乳中には、COVID-19に反応するIgAが含まれているそうで、このIgAが授乳を介して赤ちゃんに移行することでの予防効果など、これから解明すべき段階のようですが、理論的には魅力的なストーリーですね。

このコロナ禍、(もう散々言い尽くされていますが)まだまだ出口が見えません。それでも、私たちは、未来のある子どもたちのためにも対処していく必要があります。その手段として日頃の感染予防策であったり、ワクチン接種であったりするわけですが、何が正解で何が正解でないのか、現時点で答えが(出てこない|出せない)こともあります。それでも、私たちは、短期的な対処法と、長期的な対処法をうまく交えて、このコロナ禍を生き抜いていくでしょうし、人類にはそれをやってのける智慧があると思います。

■ 了

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