新型コロナのPCR検査、抗原検査、及び抗体検査の違いについて

新型コロナウイルス感染症に対する検査は、現状、大きく3つあり、PCR検査(核酸増幅検査の1つ)、抗原検査、及び抗体検査です。これら3つの検査の違いを私なりに解説しようと思います。

「いま感染しているのかどうかを知りたい」のであれば、PCR検査又は抗原検査

今現在、新型コロナウイルスに感染しているのか否かについて知りたいのであれば、PCR検査又は抗原検査を選択することになります。

では、PCR検査と抗原検査の違いは何でしょうか?どちらも被験者の体内に新型コロナウイルスが(増殖して)いるのか否かを調べる検査ですが、その検査の対象と検出方法が違います。詳細は割愛させていただきますが、PCR検査では、新型コロナウイルスの遺伝子本体であるRNAを対象にRT-PCRという手法を用いて増幅して評価します。一方で、抗原検査は、新型コロナウイルス粒子の構成成分(蛋白質~抗原)を対象に、酵素免疫測定法という手法を用いて評価します。

「あの時の症状って実は感染していたのかしら(遠目)?」を知りたいのであれば抗体検査

一方で、抗体検査というのはなんでしょうか? 抗体検査は、基本的には、過去にすでに感染していたかどうかを評価する検査です。PCR検査や抗原検査とは大きく違いますね。PCR検査と抗原検査が新型コロナウイルスの構成成分そのものを評価対象としているのに対して、抗体検査というのは、新型コロナウイルスの構成成分に反応して体内で作られた蛋白質~抗体を評価します。抗体は、体内のウイルスを排除するために、人間に本来備わっている免疫システムによって作り出されますが、その有無を評価するのが抗体検査ということになります。

このように、感染したウイルスに対する免疫反応なので、十分な抗体量が体内で作られるまでに時間がかかります。具体的には、新型コロナウイルスでは、発熱などの感冒症状が出てから2週間前後で検出できるレベルの抗体が出てくる感じでしょうか(細かいことを言えば、最初にIgMという抗体、少し遅れてIgGという抗体…ですが、新型コロナウイルスでは、抗体の挙動含めまだ多くは解明されていません)。そんな訳で、抗体検査は、以前新型コロナウイルスに感染していたのかどうかを調べる検査ということになり、もう体内にはその時に感染した新型コロナウイルスは(排除されて)いない可能性が高いです。

というわけで、一応、当院でも抗体検査を受けることは可能ですが、抗体が陽性だったとして、その意義は?と問われると、「2週間以上前に実は新型コロナウイルスに感染していたようですね…、えぇ。でも、抗体が出来ているからって、再度感染しないかどうかはまだ分かりませんし、重症化を防ぐ可能性はあるかもですねぇ…、あくまで可能性の話ですよ…。」みたいに、なんとも歯切れの悪い回答になってしまいます。新型コロナウイルス感染症は、まだ全容が見えず、抗体検査に関しては、皆さんに諸手を挙げてお勧めできる検査とは言い難いなというのが正直なところです(そういう点で、抗体検査が自費扱いなのはむべなるかなと)。

PCR検査と抗原検査、どっちがおススメなの?

さて、抗体検査には退室いただいて、「今」の状態を知りたいという方がほとんどでしょうから、PCR検査と抗原検査に話を戻しましょう。

より少量のウイルスを検出できるのはPCR検査で、検出感度という点では、抗原検査よりも一日の長があります。しかしながら、その後の検証データの蓄積により、発熱などの感冒症状が出た日を1日目として、2日目~9日目であれば、十分なウイルス量が期待され、PCR検査と遜色ない結果が得られたということで、抗原検査(簡易キット)でも「陽性」と「陰性」の確定診断が出来るようになりました(令和2年6月~)

早く結果を知りたいというニーズからは、これは非常に大きな展開でした。PCR検査は、通常は、外注で検査会社に委託しますし、RT-PCRという手技上の工程もあり時間がかかります(結果が出るのは早くて検体採取翌日の夕方以降)。一方で、抗原検査は、手技も簡便ですし、その場で結果が得られるのです(30~40分前後)。 

当院では、症状の有無等によりますが、PCR検査も抗原検査も公費という保険診療の枠内で受けることが可能です。上記を踏まえ、発熱やだるさなど新型コロナウイルス感染症を否定できない症状が出始めて2日目~9日目の方は、その場で判定できる抗原検査をファーストチョイスにしても良いかと思います。感冒症状で受診される患者さんは、一刻も早く自分がコロナなのかそうでないのか知りたいでしょうから、そういうニーズには、抗原検査がおススメ出来ます。

一方で、感冒症状が出始めて10日目以降であったり、そもそも無症状という方には、PCR検査がファーストチョイスとなります。抗原検査を先にやっても良いのですが、これで陰性だった場合は、PCR検査で確定診断を、となりますね。 

今後の行方

現在は、酷暑のさ中、新型コロナウイルス感染症と熱中症との鑑別が難しく感じますが、夜のコオロギなどの鳴き声とともに、段々と涼しくなり空気も乾燥してくると、今度はインフルエンザが流行りだします。その頃に、新型コロナウイルスはどうなっているでしょうか。勿論、収束しているというのが望ましい展開ですが、そこは神のみぞ知るところですし、従来のコロナウイルス(通常のかぜの原因の2~3割を占めるともいわれます)の挙動から類推すれば、秋~冬に流行るものだから、新型コロナウイルスも同様では?という予想もあります…。そうなると、インフルエンザとの鑑別に悩まされることになるでしょう。 

インフルエンザは、ワクチンも特効薬もあるので、まだやりようがあります。が、新型コロナウイルスはワクチンもありませんし、承認された特効薬もありません。時間の問題だとは思いますが、まずは自分たちで出来るところから ― こまめな手洗い等、新しい生活様式の実践が肝要かと思います。 

『新型コロナのPCR検査、抗原検査、及び抗体検査の違いについて』へのコメント

  1. ライオン : 投稿日:2020/09/05 00:22

    先日病院HPやこちらを参照して抗原検査を受けた者です。
    発熱を会社にも報告していたため、手配されてしまったPCR検査も受けることとなったのですが、やはり結果は同じ(陰性)でした。
    しかし、受検した抗原検査ですぐに結果が分かったため、症状発生初期から隔離していた同居家族は翌日から日常生活に安心して戻せたことは大きな利点でした、ありがとうございました。
    おかげさまで発熱も翌日には収まり体力回復に努めています。
    引き続き、有意義な情報提供に期待し、自身の一症例を報告致します。

    • Dr. Martin : 投稿日:2020/09/05 23:01

      ライオンさん、コメントありがとうございます。
      当該サイトでは、私なりの目線での記事が多くなるかもしれませんが、それでも有意義な情報提供となるような記事を心がけたいと思います。

  2. […] 2020年9月5日時点において、国から承認された、新型コロナウイルスの抗原を調べる迅速診断キット(抗原検査キット)は2つあります。1つは、富士レビオ株式会社の「エスプライン SARS-CoV-2」で、もう1つは、デンカ株式会社の「クイックナビ-COVID19 Ag」です。両方とも、「体外診断用医薬品」という、保険診療の枠内で使用することの出来る検査キットになります。一方、前回の記事に出てくる「抗体検査」ですが、抗体検査で用いるキットは、現状、体外診断用医薬品として国から認められたものはなく、いずれも研究用試薬で、保険診療の枠内では使用出来ません(したがって、抗体検査は自費扱いです)。一応述べておきますが、研究用試薬だからといって、品質が劣るというような単純な話ではなく、研究用試薬でも一定の基準を満たせば、保険適用の対象として行政検査に使用することができる場合があります。 […]

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