新型コロナのワクチン接種後に迅速抗体検査で陽性となるのか?
当院でも75歳以上の方々を対象に新型コロナワクチンの接種が始まっていますが、私は医療従事者として5/15に2回目の接種を終えています。
近々、私自身をサンプルとしてワクチン接種後の抗体価を採血にて測定しようと思っていますが、その前に
ワクチン接種後には迅速の抗体検査でもきちんと抗体陽性になるのだろうか?
という素朴な疑問がありましたので、実際にやってみました。当院では、発熱外来で新型コロナに対するPCR検査や抗原検査を随時行っていますが、過去に感染したかどうかを判定する抗体検査も随時受けることが可能です。PCR検査や抗原検査は「今、感染しているのか?」を調べる検査です。一方、抗体検査は「以前に新型コロナに感染していたかどうか」を調べる検査で、詳しくはこの投稿をご参照下さい。
で、結果ですが、少なくとも当院で採用している迅速抗体検査のキット(RightSign COVID-19 IgG/IgM Rapid Test Cassette)では、ちゃんと陽性になりました;) ちなみに、ワクチン接種前に当該キットを用いて抗体陰性であることを確認しています。
上図のように、感染後数週間で上昇してくるIgG抗体は陽性となり、感染初期であることを示唆するIgM抗体は陰性でした。5/15に2回目の接種を完了し3週間弱というタイミングですので、IgG抗体の量としては十分量が期待出来るタイミングですし、IgM抗体は仮に初期に上昇したとしても低下しているタイミングですね。どうせやるなら、ワクチン接種後1回目及び2回目の数日後、1週間後、2週間後…とか時系列で追えば良かったかなとも思いましたが、日々の多忙に追われてしまい…。
当該キット(RightSign COVID-19 IgG/IgM Rapid Test Cassette)を当院で採用している理由は、FDA(米国食品医薬品局)のEUA(緊急使用許可)を早期に取得した製品であり、性能も申し分なかったからです。実際に、これまで感染のエピソードがあって、当該キットでIgGやIgMが陽性だった方々に何人か遭遇しましたし、迅速キットですので数分で結果を得ることができ、使用感は問題なしです。何より、指先からの極微量な血液で判定可能ですので痛い採血も不要なのは大きいですね(また、最近の変異株に対する性能は従来株と変わらないとするアナウンスも出ています)。
抗体検査ということは、そのターゲットとなるもの(抗原)があるわけですが、当該キットの添付文書やFDAの資料によると、ターゲットは、ウイルス表面のスパイク蛋白質(S1)の受容体結合ドメイン(RBD)です。このRBDは、ヒト細胞のACE2受容体に結合するスパイクタンパク質の受容体結合ドメインでヒトに感染する際のキモとなるものですね。一方で、ファイザー/BioNTech社のワクチンは、SARS-CoV-2のスパイク糖タンパク全長をエンコードする修飾ヌクレオシドmRNAがその本質ですので、理論上はこのワクチンを接種することで、RBDに対する抗体も誘導されることが期待され、今回、実際にそのような結果が得られたということなります。
今後、広く新型コロナに対するワクチン接種が進んでいくと思いますが、ワクチン接種後に発熱や疼痛などの副反応がこれっぽっちも見られなかったら、果たしてきちんと免疫がついたのだろうか~抗体が誘導されたのだろうか?と不安になるかもしれません。そのような場合は、迅速抗体検査で調べてみるというのはアリかもしれませんね。
■ 了